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もやもや病には進行を止める根本的な治療薬がありません。

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もやもや病には進行を止める根本的な治療薬がありません。

そのため薬学的アプローチは「虚血の予防」と「出血リスクの回避」の天秤、および患者のQOL維持(日常生活での誘発回避)に集約されます。脳神経外科医が手術(バイパス術)を主軸に置くのに対し、薬剤師は微細な血管動態と患者の生活行動を結びつけた「フアーマシューティカルケア」を実践する役割があります。

薬学的観点から見たもやもや病の特性と、薬剤師的な考察を3つの軸で整理しました。

  1. 薬学的観点:薬物動態と処方設計のジレンマ

もやもや病の薬物治療は、主に「脳虚血(脳梗塞・一過性脳虚血発作:TIA)」の予防を目的とした抗血小板療法が行われます。しかし、ここには強い薬学的ジレンマが存在します。

抗血小板薬の選択(アスピリン vs シロスタゾール):

アスピリン(低用量)が最も一般的に選択されますが、長期服用は「成人型もやもや病」に多い脳出血の発症や重症化リスクを高める恐れがあります。

近年、薬学的に注目されているのがシロスタゾールです。血小板凝集抑制だけでなく、ホスホジエステラーゼ3(PDE3)阻害による脳血管拡張作用(脳血流増加)や、認知機能低下の抑制効果といった多面的作用(プレオトロピック効果)が期待できます。

血栓溶解薬(t-PA)の絶対禁忌:

一般的な脳梗塞であればt-PA(組織プラスミノゲンアクチベーター)などの超急性期血栓溶解療法が検討されますが、もやもや病患者にこれを投与すると、脆弱な「もやもや血管」から致死的な脳出血を引き起こすため絶対禁忌です。

  1. 薬剤師的考察:服薬指導と患者背景へのアプローチ

薬剤師が臨床で介入すべき最重要ポイントは、「過換気(過呼吸)」と「脱水」による脳虚血発作(TIA)の誘発を防ぐことです。

小児における「泣き虫発作」への配慮:

小児もやもや病では、大泣きして息が荒くなることで血液中の二酸化炭素濃度が下がり、脳血管が収縮して麻痺などの発作が起きます。

薬剤師は、散剤やシロップ剤の調剤時、子どもが嫌がって大泣きしながら内服することを絶対に避ける指導をします。

「服薬ゼリーの活用」や「アイス、ジャムに混ぜる工夫」など、泣かせずにスムーズに飲ませるためのアドバイスは、単なるコンプライアンス向上ではなく、直接的な発作予防(リスクマネジメント)に直結します。

日常生活の「熱い食べ物・楽器」の確認:

熱いラーメンやスープを「フーフー」と息を吹きかけて食べる行為、リコーダーや風船を膨らませる行為も、過換気を引き起こし発作を誘発します。

服薬指導の雑談の中から、学校の音楽の授業の状況や食事の好みを聴取し、医師へ共有または生活指導を行います。

脱水対策と併用薬チェック:

脱水は血液を濃縮させ、微小血栓と虚血発作のリスクを跳ね上げます。

夏場のアドバイスはもちろん、他科から「利尿薬」や「SGLT2阻害薬(尿糖排泄に伴う利尿作用)」が処方されていないか、多剤併用(ポリファーマシー)の観点から厳重にチェックします。

  1. 周術期(バイパス手術前後)における薬剤師の役割

もやもや病は、頭蓋外の血管を脳表に繋ぐ「血行再建術(バイパス手術)」が有効な治療として確立されています。

この前後における持参薬管理が薬剤師の腕の見せ所です。

休薬期間のコントロール:

手術時の出血リスクを抑えるため、抗血小板薬を一時的に休薬するか、あるいはバイパス血管の閉塞を防ぐためにあえて直前まで継続するかは、患者の虚血リスクに応じて非常にシビアに決定されます。

薬剤師は手術予定日を正確に把握し、医師の指示通りに休薬(または継続)できているか、サプリメント(EPA・DHAやイチョウ葉エキスなど出血傾向を高めるもの)の併用がないかを徹底的に監査します。

まとめ

もやもや病における薬剤師は、単に「血をサラサラにする薬」を出す役割ではありません。

「この薬の処方は虚血予防なのか、出血リスクは許容内か」「日々の生活で過換気や脱水を起こす要因はないか」を薬理学・病態学の視点からプロアクティブにアセスメントし、チーム医療へ還元することが強く求められます。

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パンダ

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大阪府の「堺市(さかいし)」に住んでいます。
現在、病院勤務の薬剤師です。
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