「まちくま」は先日、生成AIにて画像を作りました。
その詳細につき、自身の管理するサイトにアップロードしたものの、AIが生成した文章や画像は、
果たして著作権法ではどのような扱いになるのだろうか?・・・と、画像アップに躊躇したものです。
生成AIを利用して文章や画像を作ったとしても、人間がAIを利用せずに文章を作ったり絵を描いた場合と、ほぼ同様に判断されると言われているところが微妙なんですね。
たとえAIが生成した画像であったとしても、既存の著作物との類似が認められない場合は、既存の著作物の著作権侵害とはならない。果たしてそうでしょうか?
つまり生成AIの歴史は浅く、生成AIによって作成した文章や画像は、自社の著作物としては見なされないものの、既存の著作権を侵害しない限りは、ビジネスシーンで使用しても現状では問題は無いとされている。
しかし、近年になり、遅ればせながら文化庁では、AIの開発やAI生成物の利用に当たり、整理すべき論点を法学者や弁護士を交えて検討しているとしており、今後は生成AIが著作物として認められるためのより明確な基準が追加される可能性があるようです。
従って、ビジネスにおける生成AIの利用を検討している企業は、今後の文化庁の発表内容に留意すべきと考えます。いまさらですが、米国やEUらと比較すると日本の動きは遅いですね。
【我が国では】
●AI創作物に創作性が認められるのは、どのような行為の場合なのか?
文化庁の審議会では、人による以下のような行為があれば、AI創作物にも創作性が認められる可能性があるとされています。
・指示・入力(プロンプト等)の分量・内容
・生成の試行回数
・複数の生成物からの選択
・生成後の加筆・修正
しかしながら、創作物に人がどのように介在したかを外見上で見分けることは極めて難しく、
アバウトな解釈ではあるが実際の判断はケースバイケースということになる。
【海外では】
米国の著作権法には、「フェアユース規定」と呼ばれる権利制限規定があります。
フェアユース規定の要件を満たすか否かは、次のような4つの要素に基づき、個別に判断されます。
① 使用目的と性格
② 著作物の性質
③ 使用される部分の量・重要性
④ 原著作物に対する悪影響
従って、AIの開発・学習段階であるか、生成・利用段階であるかに関わらず、
権限制限規定以外の場合は著作者の許可が必要になります。
【訴訟問題】
米国では、ChatGPTが複数の著作者から訴えられています。
例えば、開発・学習段階における著作権やプライバシー侵害についてインターネットユーザーから、無断で書籍の著作権を利用したとして作家グループから訴訟を起こされるなどの事例が続いています。
特に、注目されているのは、NYタイムズの訴訟です。
NYタイムズは利用規約を変更し、AI開発に無断で記事データを利用することを禁止していました。
その上で、Open AI社に対して、記事データを無断で利用したとして、利用料の支払いを求める訴訟を起こしています。
【EUでは】
EUには、AI開発・学習段階について、DSM(Digital Single Market)著作権指令による規定があります。EU加盟国には各国に個別の著作権法がありますが、DSM著作権指令に基づき、各国の著作権法を制定または改正する義務を負います。
DSM著作権指令には、以下の条件が規定されています。
DSM著作権指令3条は、以下の条件で著作物のAI学習利用を許容しています。
・主体:研究機関、文化遺産施設(cultural heritage institutions)
・目的:科学研究
・権利者による学習利用からのオプトアウト:認められていない。DSM著作権指令4条は、以下の条件で著作物のAI学習利用を許容しています。
・主体:限定なし
・目的:限定なし(営利目的も含まれる)
・権利者による学習利用からのオプトアウト:認められている。引用元:【2023年最新】弁護士が解説!著作物のAI学習利用に関する海外制度と最新動向
(ZeLo LAW SQUARE)https://zelojapan.com/lawsquare/35949
EUでは、世界初の包括的なAI規制の準備が進んでおり、2024年から施行される予定となっています。
個人情報保護に対するGDPR(EU一般データ保護規則)と似た広範囲で厳しい制裁金を含む規則になるのではないかと言われています。
以上のように、日米欧を比較するとAI開発・学習段階においては、日本が著作物を利用し易い環境にあると言えます。
Open AI社が積極的な日本進出を公言している背景には、日本語の学習データの蓄積が英語と比較して少ないことと、このような著作物の利用環境にあると言われています。
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